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簿記の知識は株式投資の武器になる!銘柄選定の具体的な手順

財務分析

株式投資をする時、財務諸表を参考にしたいのだけどどうやって見ればよいのかわからない、というお悩みを解決します。

株式投資で資産1億を目指している、だいご@come-outです。
私は簿記1級を取得していて、その知識を生かして株式投資をしています。

株式投資をする時、その会社に投資するかどうかどうやって判断していますか?

株式投資において一番重要なのは企業のビジネスモデルです。

  • 独自性のある商品・サービスであるか?
  • 顧客満足度は高いか?
  • 競合との差別優位性はあるか?
  • 将来に渡ってもビジネスモデルは継続するか?

このような問いかけに耐えうる会社を探しましょう。優れたビジネスモデルの会社を見つけ出せれば投資はほぼ成功したようなものです。

しかし優良企業を見つけたからといってすぐに投資するのは危険です。現在の株価が実際の価値と比べて適正であるかどうかを見極める必要があります。

どんなによい会社でも割高で購入するのは失敗の元です。

今日は企業の実際の価値を見極めるための財務分析のお話をします。

財務諸表はお化粧ができる

財務分析でやっかいなのは、財務諸表はある程度お化粧ができてしまうということです。

財務分析の前に、まずはお化粧を取り除いてスッピンにする必要があります。お化粧をはがさないまま財務分析をすると数値を見誤ります。

お化粧を取り除く時に必要になるのが簿記の知識です。

財務諸表には「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」の3つがあります。順番に説明をしていきます。

損益計算書

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損益計算書は1年間の営業成績を表すものです。シンプルに考えれば「売上ー費用=利益」です。

この中で一番重視したいのが売上です。なぜなら費用というのは前述したお化粧がしやすいからです。

もちろん会計処理として認められた範囲内ですが、処理の仕方によって費用として計上される金額が異なることがあります。

例えば引当金は実際に発生した金額ではなく見積もりで計算するため、人によって(会社経理部の方針によって)数値が大きく異なってきます。

売上高の伸びを重視する

いくら売上高が大きくても利益が出なければ企業は存続できません。その意味では利益は大切なのですが、投資の観点からは利益よりも売上高の伸びを観察したほうがたいていは上手くいきます。

利益は天災・人災・その他要因により様々な影響を受けます。売上高が伸びても利益が減少するということはよくあります。

注意は必要ですが、利益の変動は一時的・短期的な要因であることが多いものです。

一方、売上高というのは長期的・固定的要因に影響を受けやすいです。需要の変化、競合企業との位置関係などです。このような要因は短期的には変わりにくく、長期のトレンドを形成します。

売上高が順調に伸びていれば利益は後からついてきます。Amazonが典型例です。Amazonも最初は赤字でした。

Amazonが当初重視していたのは市場シェアです。市場シェアが拡大すればインフラコスト、プロモーションコストなどあらゆるコストが効率化できます。

コストが効率化されればいずれか利益が出ます。しかも莫大な利益です。

利益率を重視する

  • A社 売上高1000億円 営業利益10億円 営業利益率 1%
  • B社 売上高100億円 営業利益10億円 営業利益率 10%

同業界でこのような2社があった場合、どちらに投資するのがよいでしょうか?

もちろんこれだけでは判断は難しいのですが、ある程度成熟している業界であれば(今後の市場環境の変化がなさそうであれば)基本的に利益率は高い会社を選んだほうがよいです。

利益率が高いということは、提供している商品・サービスの付加価値が高い、あるいは競合優位性があるということです。

商品・サービスが差別化できないと価格競争に陥りやすくなり、利益率は低下します。

利益率が低いと、原材料費の高騰、人件費の高騰といった要因ですぐに赤字に転落してしまいます。

特別利益・特別損失は無視する

特別利益・特別損失というのは、その名の通り、通常の企業活動ではないもので発生した利益や損失のことです。

例えば保有していた不動産が購入した時よりも高く売れて得られた売却益、使用しなくなった固定資産を廃棄した除却損などです。

このようなものはたまたま発生したものなので、企業本来の評価とは切り離して考えたほうがよいです。

銘柄選定においてスクリーニングする際は、「売上高伸び率」をチェックしましょう。

貸借対照表

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貸借対照表は資産状況です。シンプルに言えば「資産―負債=純資産」です。

ある会社の現金・有価証券・売掛金・機械設備などの資産合計が1億円、銀行からの借入・買掛金などの負債が8千万円の場合、純資産は2千万円ということになります。

株式投資の指標としてPBRというものがあります。

これはPrice Book-value Ratio(株価純資産倍率)というもので、

PBR = 株価 ÷ 1株当たり純資産

で表されます。

PBRが1倍以下であると1株当たり純資産よりも株価が安いということになります。割安のように思えますが、この数字をそのまま信じてはいけません。

なぜなら資産とカウントされているモノの中には資産価値がないものが含まれていることがあるからです。

わかりやすい例を挙げます。2018年9月3日、1000億円超の負債を抱えて倒産したケフィア事業振興会ですが、東京商工リサーチの情報によると、なんと「顧客情報」を47億円の資産として計上していたということです。

 9月3日、(株)ケフィア事業振興会(TSR企業コード:298080745、以下ケフィア)と関連3社が、負債総額1,053億3,706万円を抱えて東京地裁から破産開始決定を受けた。4社の債権者数は3万3,747名に及ぶ。
ケフィアの破産申立書によると、2018年6月末時点の資産簿価は484億448万円。現預金は5,477万円しかなかった。「柿」などの商品在庫額も3,252万円にすぎない。
残りの資産は、かぶちゃん農園(株)(TSR企業コード:296009326、長野県)などグループ向け売掛金(約26億円)、貸付金(約248億円)のほか、「商標権」が約19億円。「顧客情報」も資産として約47億円を計上していた。
こうした資産の大半は回収が困難とみられる。だが、ケフィアはホームページに決算書の要旨しか掲載せず、会員を安心させていた。

東京商工リサーチ

常識的に考えて顧客情報に47億円の価値というのはあり得ないでしょう。

貸借対照表で重要なのは資産内容を見極めることです。といっても難しくはありません。

資産の中で現金化しにくいような資産、あるいは一般的に見て資産としての価値がないものについては資産とカウントしないで差し引いて考えることです。

資産としてカウントすべきでない資産項目

現金化しにくい資産の例

  • 設備機械

設備機械などは売却先が同業者に限られます。また資産価値よりも安く買いたたかれることが普通です。

資産価値がないものの例

  • 商標権、営業権などの無形固定資産

商標権や営業権などは目に見えないものです。超有名企業の商標権であれば資産価値が付く可能性はありますが、一般的には売却価値は皆無です。

資産価値があるかどうか怪しいものの例

  • 貸付金

貸付先がはっきりしていればよいのですが、経営者に対する貸付だったり同族への貸し付けの場合、回収が難しいことがほとんどです。

財務分析で資産を計算する場合、

  • 現金預金
  • 有価証券
  • 売掛金
  • 敷金

といった現金への換金度が高いものに限定するのがよいでしょう。

キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー

キャッシュフロー計算書とは実際のお金の流れを表したものです。期初にあったお金に期中に出入りしたお金を計算し、期末のお金の残高を算出します。

「期初残高+期中入金ー期中出金=期末残高」という公式です。

会計のことを全く知らないと、損益計算書と何が違うのだろうかと混乱してしまうかもしれません。

損益計算書の場合、お金を受け取ったりお金を払っていなくても売上や費用を計上します。売掛金だったり買掛金と呼ばれるものです。

一般的な企業の場合、後からお金を受け取ったり支払ったりすることがほとんどです。

それに対してキャッシュフロー計算書は実際のお金のやりとりで計算します。

キャッシュフロー計算書のよいところは、実際のお金のやりとりで計算するのでお化粧ができないということです。

例えば今期の業績が悪くて見栄えをよくしようと架空売上を計上したとします。損益計算書だけではこの架空売上は見抜けない場合があります。

しかし架空売上の分が実際にお金として入金されることはありませんのでキャッシュフロー計算書ではごまかしがききません。

キャッシュフロー計算書はここだけ見ればOK

キャッシュフロー計算書は細かく見る必要はありません。

キャッシュフローはおおまかに3つに分類され計算されます。

営業キャッシュフロー

本業から稼いだお金です。営業キャッシュフローの赤字が続くと本業がうまく行っていないということで危険な状態です。

投資キャッシュフロー

設備投資など将来のために支出したお金です。基本的には投資キャッシュフローはマイナスである状態が普通です。

財務キャッシュフロー

借入金の増減です。財務キャッシュフローがプラスの場合は借入が増加、マイナスの場合は借入が減少という意味になります。

一番理想的なのは

  • 営業キャッシュフローがプラス
  • 投資キャッシュフローがマイナス(営業キャッシュフローの範囲内で)
  • 財務キャッシュフローがマイナス

という状態です。なぜなら本業できちんと稼ぎ、稼いだお金の一部を将来のために投資し、借入金を返済している状態だからです。

急成長している会社の場合は、投資需要が旺盛のため、

  • 営業キャッシュフローがプラス
  • 投資キャッシュフローがマイナス
  • 財務キャッシュフローがプラス

ということもあります。投資を急ぐために本業からの儲けだけでなく借入により投資資金をまかなっているということです。

一番危険な会社は営業キャッシュフローがマイナスで財務キャッシュフローがプラスの状態が続くことです。

これは本業で稼げなくなった部分を借入して運転資金をまかなっている状態です。

全体のキャッシュフローがプラスであり営業キャッシュフローがプラスかつ財務キャッシュフローがマイナスの会社を選定しましょう。